あっち側
初めてアルバイトをしたのは18歳、高校を卒業した1か月後であった。
初めて手にした給料は初代iPadの購入に消えた。とても昔のことのように思う。
そのバイト先は小さなカフェだったので、
忙しいランチタイムでもなければ、店長と自分で2人きりで働いていた。
最近ふと、そのときの店長の年齢は今の自分の年齢くらいではなかったかと思った。
店長はあまりコミュニケーションの得意でなさそうな男性であった。
客がいなくて暇な時間を一緒に長く過ごしたが、あまり多くの会話をしたという覚えはない。
しかしたまに自分を褒めてくれたり(褒め方が下手だったので残念ながら当時の自分には伝わっていなかったが)
いくつかの本や映画を勧めてくれたり、実際に貸してくれた、“良い大人”だった。
『十角館の殺人』や『火車』といったミステリー小説は、あまり気がのらなかったが時間だけはあったので素直に読んでみたら面白かった。一方、何が面白いのかわからない映画も見させられ、感想に困ったこともあった。
他のバイトは全員女性だったので、たぶん店長は男性同士で話せることがうれしかったのではないかと今振り返ると思う。自分の好きなものを勧めたくなる気持ちもわかる。
若い頃にどんなアルバイトをするかというのは結構、人生に影響を与えると思う。
ブラックな労働環境にあたることもあるが、基本的に、時給以上に得られるものがあるのがアルバイトという経験だと思う。と言いつつ、当時のバイト先の人間関係なんて今は残っていない。
残ったのは思い出だけ。でも思い出だけで十分だ。
子どもにクリスマスプレゼントを買い、枕元に置いた。
あぁ自分も気づいたら“良い大人”の側になっていた。
子どもと大人の間に明確に線があるわけではないはずだし、
えいやと超えたつもりもないけれど。
子どもの自分からしたら大人はみんな、“あっち側”にいたように思えていた。
でも今では“こっち側”だ。我が子だけでなく若いクライエントや学生にも、2000年代の作品を勧めたくなってくる。
大人になるということは大して悪くないと今のところ思っている。
が、たぶんもうしばらくすると責任が大きくなってきて、嫌になるのかもしれない。
様々な年代と触れ合うことで地平は広がる。今の仕事の良いところでもある。
時にあっち側、時にこっち側、いったりきたりしながら、私も他者の人生と関わっていこうと思う。
職場は26日で仕事納め。
でしたが、やり残したことが沢山あるような。
研究論文を書き進めながら休憩がてらブログをひとりカフェにて。
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