人の怒り

精神科には抑うつ、不安など様々な精神症状を持った患者が来ますが、

中には「怒り」が中心問題になっているケースもあります。


「怒り」という感情について考える時に、

その対象がどこに向いているのか、どれほどの強度か、どれほど持続する(反すうする)か、どのような行動パターンに繋がるか、背景にどのような性格傾向があるのかなど、様々な視点で見ることができます。


やり場のない怒りという表現は日常的にもよく聞かれます。

感情の中でも「怒り」という衝動性の強い感情というのは、“やり場”が必要です。

人によってはモノにあたったり、酷い場合には他者への暴言・暴力になります。

中には悪気があってそうするのではなく、あまりにエネルギーが大きすぎて自分の中では制御しきれず外に放出するしか無いというように見えることもあります。


アンガーマネジメントは企業内の研修でも昨今よく取り上げられ、

ハラスメント防止の観点からも注目されている分野です。

個人的にはあまり詳しく勉強したことがないのですが、

ひとつはいかに“やり過ごす”かということが重要視されます。

やり過ごすというのは、状況がうまく変わっていかないときの便利な言葉でもあります。

怒りのピークは6秒間だと言われており、

そのピークをやり過ごせばおさまっていくはずなので、数字でも数えて待ちましょうとか、カッとなったと気づいたらその場から離れましょう。ということがアンガーマネジメントの中では教えられているようです。


個人的には普段あまり怒るという行動に出ることがないので、あまり関係ないなと思っていました。しかし感情としては確実に持っているようです。

周りから見たら穏健なタイプでも、結局は放出の仕方が違うだけで怒り自体は静かに溜まっているという方はよくいるのではないかと思います。

沸点が高いからキレないだけで、本当は少しずつ熱せられている場合です。


沸点を超えたときの対処法として先述した“6秒ルール”を用いたとしても、怒り自体は奥に隠れただけでまた出てきます。

深い怒りの根源には解決されないコンプレックスがあるのかもしれず、いつかやり過ごせなくなるかもしれません。

そう考えると時限爆弾のように思えて怖くもなりますが、

実際、カウンセリングで吐き出してもらって少し緩和させられたとしても対症療法的でしかないような気がすることがあります。


誰かを指して、あの人は何をしても怒らないとか、仏様のような人、

とか簡単に言うことがありますが、誰しも怒りという感情自体はあるはずです。

それをどのように安全に制御していくか、

そして深い怒りに対しては、長期的な観点で怒りの根源を徐々に許していくということが重要な心的課題になるのだろうと思います。


「怒り」について考えてみました。





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