自殺する動物

日本は自殺が多いというイメージがありますが、
実際にはここ数年減少し続けています。

7月に今後5年間の国の指針となる「自殺総合対策大綱」が閣議決定され、
2026年までに人口10万人当たりの自殺者数である「自殺死亡率」を15年と比べ30%以上引き下げることが目標とされました。

国をあげての対策で、人々の心理的苦しみが減るのは良いことだと思います。

私たちがこの国で生きていくのに、
息のしやすい環境が整っているということは基本だと思います。

しかし一方で、
私は自殺というのはとても個人的な出来事だと思います。

誰かが自殺するとワイドショーなどでコメンテーターが自殺の原因や周りの落ち度についてあれこれ述べていることがありますが、

自殺の原因なんてものは周りの人が想像できるものではないと思います。

平野啓一郎の小説『空白を満たしなさい』では、
自殺した主人公がこの世に生き返り、
幸せだったはずの自分がなぜ死んだのか、
その謎と向き合います。

自殺というのは死んだ後の自分にも分からないほど、
偶発的で、刹那的で、
理由のないものなのかもしれません。

客観的に見てどれほど恵まれた環境にあっても、
一瞬の主観が人を死に追いやることを忘れてはならないと思います。

自殺の要因を突き止め、具体的な数値目標を掲げることは重要ですが、
単純な因果関係に惑わされてはならないと思います。


長野県ではLINEを使った相談窓口を活用しようとしているようです。

大学の時に、授業で同じようなサービスを考案してグループで発表したことがありました。

子どもたちには子どもたちの世界があり、
援助の求め方も大人とは違います。

私たちが中学生の頃にはLINEはありませんで、友人との連絡手段はEメールでした。
実感では、LINEがここまで浸透したのは、ここ6年程だと思います。

どんどん繋がりやすくなる一方で、
一つのメッセージの“重さ”は軽くなっていっているような気がします。

援助を求めやすければ求めやすいほど良い、と単純に言えるのでしょうか。

本当に助けなければいけないのは、
目に見えている周りの人ではないのか。

しかし、そのような価値観は、
自殺した後に過度な罪悪感や責任感を、
家族や友人にもたらすことも想像されます。

自殺問題は本当に難しく、
人間のリアルを考えさせられます。

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