不幸
精神科で働いていると、
“不幸”を見ることに慣れていく。
比べるものではないと分かりつつ、
自分よりも大変な人生を送っている人もいるんだと憐れんだり安心したりする。
たまに立ち止まって理由を探したくなるが、
それが危険なことのように感じて立ち止まれない。
なぜ苦しまなきゃいけないのかと考えると途方もなくなるのが分かっているのと、
それが無意味だと気づいたときに無気力に陥りそうだから、
目の前にある苦しみに淡々と向き合っている。
この診療科は、目に見える成果が得づらい。
外科や皮膚科のように目に見える治療とはかけ離れているし、
原因が結果なのか結果が原因なのかも分からなくなるような、
複雑な経過を辿るのが精神というものだ。
成果の見えづらい中でモチベーションを保つのは結構難しいことなのかもしれない。
悩みながらも、どこかで自分満足をしないと治療者を続けられないような気もする。
この世から不幸がなくなってほしいと思いながら、
不幸がなくなったら仕事がなくなるという矛盾と皮肉を抱えている。
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