新しい人生
長男が産まれました。
今から退院手続きをして、今日から3人での生活が始まります。人生の転機なので、久しぶりに書き始めてみます。
人生は長いような、あっという間のような。
私は心理臨床の仕事をしています。
教育領域ではもちろんのこと、医療領域でも子どもに関わることは多いです。
そして、子どもの保護者と面接することも多いです。
私は保護者さんたちから見れば「心の専門家」ですから、
具体的なアドバイスを求めてこられたり、
発達障害かどうかを尋ねてこられたりします。
私は多くの保護者と面接する中で、
親が抱える不安や焦り、怒り、劣等感、悲しみ、
あらゆる感情と向き合ってきました。
カウンセラーとしては最低限の仕事はできていたのかもしれません。
しかし一方で、「自分は子育てしたことがない」という事実が頭の片隅にありました。
このお母さんは、自分より若くて子どもを持っていない人、しかも男性にカウンセリングをされたくないのではないか、力になれないのではないかという、
後ろめたさみたいなものだったかもしれません。
子どもを持っていない人が、人の子育てに何もコメントしてはいけないなんていうことはないと思います。
たとえ同じ体験をしていなくても、そこに共感的な理解を示し寄り添っていく、想像していくことがカウンセリングの肝でしょう。
だからこそクライエントの話をよく聞こうとするのです。
そして同じ体験ではなくても、どこかで自分の他の体験とつながるときがある。これについてはまだ私はよく分かりませんが、きっとそういった奥深い仕事なのであり、
自分もそうだったから大丈夫だよだとか、貴方ならこうしたほうがいいだとか、そういった簡単なことではないのだと思います。
その人にとってその出来事はオーダーメイドなものであり、
なにかアドバイスを求められたとしても、
一般論をあてはめればよいというものでもありません。
不思議なことに、私は一般論的なアドバイスをしたケースよりも、
うまくアドバイスが出来ないまま、ただ一緒に悩んで傾聴しつづけたケースの方が、結果的に保護者との信頼関係が築かれ、ある程度継続したという経験があります。
すぐに事態を分かろうとしないことも大事なのだと思います。
そういう意味では、「分からない」ということは別にマイナスなことではないのだとも新人心理士として考えます。
不登校、緘黙、かんしゃく、友人関係、
様々なことが子どもたちの中では起きており、
保護者や教師の多くはそれらの事象を問題として扱い、
早く解決しようとします。
そこで私も早く解決してあげたいという気持ちになりますし、
ついアドバイス(しかも根拠の乏しい)を言ってしまうこともあるのですが、
本当はそういった問題が起きている「意味」のようなものを、大人たちがじっくり考えることも大事ではないかと思っています。
子どもたちが出してくる「問題」の意味とはなんなのか。
なぜ今ここで?
この事象を通して親子関係はどのように変わり、そして今後展開していくのだろうか。
そういった視点を忘れずにいたいものです。
とはいえ、やはりこの度自分が父親になったことで、
より「分かる」ことは増えるのでしょう。
そして時には、「分かりすぎる」こともあるかもしれません。
臨床の仕事はどうしてもカウンセラー自身の個性や過去の体験とは切り離せないものだということが段々わかってきた気もします。
個と個の出会いであって、やはりそこには転移や逆転移といったものが働いている。
さて、親になったからといってすぐに臨床に影響が出るかは分かりませんが、
ともかく自分の人生にとって次のステージに入ったことは間違いないのでしょう。
実は、キャリアのことで早めに決断しなければならない事柄があり、迷っています。
子どもが産まれたこのタイミングで悩みが増えるのは大変だなと思いつつ、
もしかしたら今こそ教育分析を受けるときなのではないかと思い、自分が信頼している先生に連絡をとってみました。
しかし、教育分析は今はやらないほうがいいと言われました。
自分としてはその返信をいただいたときは意外だったのですが、少し時間が経てば、その先生が仰る、いま私が教育分析を受けることの懸念点とリスクについてとてもよく納得ができました。そして、なぜか安心している自分もいました。
いま悩める私には何かが必要なのかもしれませんが、
それは心を深く切り込むことではなく、端的に言えばもう少し浅いところでのストレスマネジメントということになるでしょう。
とにかく今は産まれてきた命と、妻を大切にすることが一番なのだということにも気付かされました。
色々なかたに出産のご報告をし、
お祝いの言葉をいただいているところです。
皆さんありがとうございます。
またこれから、自分にとって必要なときにぼちぼち書いてみます。
そろそろ退院手続きの時間のようです。では。
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