等身大の問いを持つこと
学生への講演を無事に終えました。
なんだかんだ自分の言葉で人前で話すのは苦ではなくなってきました。
プレゼンのコツは練習しすぎないこと、とある人に言われたことがありましたが、
実際に台本を用意しすぎると棒読みになってしまうため、
伝えたいテーマだけをある程度固めておくだけにして、
あとは自然と自分から出てくる考えや想いを言葉にすればよいのだと思うようになりました。
しかしその結果喋りすぎて時間をオーバーしてしまうので、
緊張はしなくなってきたけど、うまくはない。という感じでしょう。
今回の講演は個人的に結構力を入れてパワーポイントを作りました。
ひとつひとつのスライドに、自分がこれまで本当に感じてきたことや、学生に伝えたいことを込めました。
ややリアルな話をしすぎて、心理職って大変そうだなと感じさせてしまったかもしれません。
しかし、大変だからこそやりがいがあるということを伝えたかったのです。
タイトルは「心理臨床の難しさと面白さ」としました。
この仕事は難しさと面白さが表裏一体です。
前にも書きましたが、面白いから飽きない、飽きないけど大変、大変だけど飽きないの繰り返しなのです。
学生がレポートを書いて送ってくれるので読ませていただいていますが、割と伝えたかったことが伝わっていると感じられて、話して良かったなと思いました。
実務の話、すなわち具体的な業務内容やそこで起こる困難事例、工夫などの話もしましたが、
それと同じくらい、やや抽象的で問いかけるようなことも話しました。
本当はそこが一番話したかったところです。
でも抽象的な話だけでは伝わらないと思ったので、
先にグループワークも入れて具体的に想像してもらうということをしました。
グループワークはもしも自分がこんな学校で働くならどんな工夫ができるか、その学校の強みと弱みはどんなことがあるかというテーマでディスカッションしてもらいました。
思ったよりも活発に話し合ってくれましたし、
どのグループもしっかりポイントを押さえた意見が出ていました。
後日、グループワークがきっかけで同期と仲良くなれたと教えてくれたM1さんがいました。
そういう面からも、やってよかったと思います。
実は最初は90分話し続けられる自信がなくてワークを入れて逃げたという側面もあるのですが。
レポートの中には、「先生も大学院生のときは自分と同じような悩みを抱えていたことを知れて安心できた」というコメントもありました。
どうしても悩みというのは個人的なもので、
もしかしたら自分しかこの悩みを抱えていないのではないか、
他の人はもっと自信があって、もしかしたら自分だけが心理職に向いていないのではないか、
カウンセリングもアセスメントもセンスがないのではないかと不安になる院生も多いのかなと思います。
しかし、自信がないというのは当然なことなのではないかと思います。
「心」という唯一解のないものを相手にして、
初めから自信を持って臨むことの方がむしろ不自然ではないかと思うくらいです。
自信なんてなくていいし、迷ってもいい。
むしろ二律背反、ジレンマの多い仕事であるということを知り、その中で迷いと向き合うことが大切なのではないかと思います。
若手には若手の、中堅には中堅の、ベテランにはベテランの(きっと)、迷いがあるのと同じで、
大学院生には大学院生の迷いがある。
それは全く悪いことではないので、今しか持てない視点・感情体験を大事にして、
等身大の問いと向き合ってほしいと伝えて終わりにしました。
偉そうに語ってしまいましたが、結局は自分も今でも迷いながらやっているし、うまくいったと言えるようなケースなんてそれほど多くはない。
でもこの仕事を面白いと思えるようにはなってきました。
まだまだ先は長そうです。
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