支えとなったもの
心理士5年目になりますが、
飽き性の自分がなぜ今までなんとか心理の道から逃げずに続けてこられたかについて、
書きながら考えてみたいと思います。
心理士の仕事は、結構、こちらの心が傷つくものです。
若手であれば当たり前のことなのかもしれませんが、
十分な見立てや準備をしないがためにケースの方向性が分からなくなったり、
漫然と続くカウンセリングでは、今なにをしているんだろうとふと分からなくなることも多々ありました。
うまくいかない、手応えがない。むしろ悪くなってないか?
不全感によってモチベーションや自信が下がるような時期が何度もありました。というか殆どずっとそうでした。
containという言葉がありますが、
カウンセラーにはやはり病める人から溢れる負の感情を包容するだけの器がいるのだと思います。
その器は単に大きい人と小さい人がいるということではなく、
誰しも大きいときもあれば小さいときもある、という方が正しいかもしれません。
カウンセラーにも事情があるのですから。
カウンセリングには優しさと冷静さ、そして時にはこの人との大仕事を諦めないという情熱もいるのだと思います。
臨床経験が浅いうちにそれらを全て持ち合わせるのは果たして可能なのでしょうか。
最初から全部できている人がいたら逆に怖いです。
でもやはり、自分の器が相手からこぼれ落ちるものを受け取りきれないことに、傷つく仕事でした。いえ、現在進行系ですね。
現場に出て、思ったよりも自分は共感能力がなかったんだなー。察しがいいとか自分では思ってたけど、本当は思い込みが強いだけだったんじゃないかなー。って思いました。
見立てと偏見は別物なのですが、案外それらをしっかりと分けて整理することは初心者には難しかったりします。
というような難しさを感じながら、
しかも低収入・不安定な状態で続けてきました。
しかし、なぜ続けてこられたのか?今回書くのはこれでした。
まず、1つ目、月並みですが最も重要なこととして、
ちゃんと人とつながっていたからです。
殻にこもって孤独になることをしなかったと言えます。
心理士仲間がいたことが支えになっていました。
今は少しだけ疎遠になってしまいましたが、
SCで苦しんでいたときは先輩のSCに話を聞いてもらっていました。カウンセリングには守秘義務があるということもあり、心理士は有象無象な面接内容をあまり人に話せずにモヤモヤしながら1人で抱えて過ごさなければいけない日があります。
でも同じSCなら、この仕事のナイーブさを前提として分かってくれているので、ケースの内容を話さなくても学校で働くことそのものの苦労を理解してもらえる感じがあり、助けられていたと思います。
SVなどの縦のつながりも大事ですが、斜め上の関係、横のつながりも大事です。
臨床歴5年未満対象の研修に出たりもしました。
若手には若手特有の迷いが当然あるので、それを月に1回共有できる場があったのはよかったです。
そういう場があるということを教えてくれたのも先輩の心理士だったりするので、結局は心理士同士でつながっておくこと、情報を伝え合うことが大事なんだと思います。相変わらず縁や人脈には恵まれていると感じます。
なぜ続けてこられたか?2つ目としては、
やはり臨床は面白いから、だと思います。
人の変化に立ち会えるのはドラマチックです。
人はそう簡単に変わるものではないという意見もありますが、
私は人には変わる潜在能力があると感じます。
変わるをどう捉えるか。認知の歪みが修正されたという程度のこともあれば、人生観ががらっと変わる、見た目が垢抜けるとかもあります。
過去の事実は確かに変わらないけど、それに対する主観の意味づけが変わっていくし、新たな物語として語り直す事もできるのが人間です。
まだ5年目とはいえ、そのドラマは確かに感じます。
面白い、から飽きない。でも大変、でも飽きない、しかし大変、ただし飽きない、そうはいっても大変...のループです。
なんだかんだ人のことが好きなんだと思います。
だからやれている。
なぜ続けてこられたか?最後に3つ目。
最も単純なこと。「終わらないから」です。
この仕事・学問はいつまでも終わらせてくれないからです。
ゴールはあっても、道はその後も続いています。宇宙の無限さに似ています。
カウンセリングが終結してもその後のクライエントとカウンセラーの人生は続いていきます。
クライエントがゴールの向こう側へ歩き続けるのと同様、
カウンセラーにも次のステージが控えています。
ドロップアウトすることもできますが、
まるでマーベル映画のように、まだエンドクレジットのあとに何か重要な映像が差し込まれている可能性にかけたくなる。
気になるし、次も見なきゃと自然に思う。
まだ終わってない、まだ伸びしろがあると思わせられる感覚。
これがあるから今後も暫く続けていくのだと思います。
書いてみましたがあまり深まらなかったような気もします。
とてもシンプルで、「仲間に支えられながら、諦めずに臨床への関心を持ち続けた」という、たったそれだけのことだと思います。
でもこれが大事ですし、これがないと実際に若手は疲弊して潰れていきます。不安定な雇用の中でも、建設的な思考を持って仕事に向き合えるかどうかはリアルな問題です。
そして3つには入れなかったけれど、
ワークライフインテグレーションという言葉を知ったのも大きいかもしれません。
それはワークとライフを切り離して両立させるという考えとは異なり、
ワークとライフとを統合する、つまりお互いが独立してあるのではなくて相互に混ざり合い、相乗効果をもたらすという考え方。
心理士も人間なので、カウンセリングを担当している間にいくつものイベントを面接室の外の世界で経験してくるわけです。
とりわけ就職、結婚、出産といったおめでたいこと、自分や家族が病気になったり、離別、事故や被災といった痛ましいこと。これらカウンセラー自身の身に起きたことは臨床とは切り離せません。面接室の中に持ち出すかどうか別として、自分の経験からくるものがクライエントに対する深い理解や感情移入につながることがあります。良い影響か悪い影響か短期的には分かりませんが、臨床に関係すると思えば、どんな経験(風邪を引いたなどという小さなことから多くの人数の人の命を救ったという大きなことまで)もなにひとつ無駄にはならない。この仕事においてはワークとライフをインテグレイトしていくことはとても大事なテーマだと思います。
自分の場合は結婚し子どもができたこと。その変化によって世の中の見え方は確実に変わったし、仕事の向き合い方にも何か変化が出てきているような気がします。
これもまた、この仕事の面白さにつながっており、
今後自分の人生は仕事とどう統合されていくのだろうという期待もあるのではないかと考えています。
こんなところでしょうか。
今思いついていないだけで多分自分を支えてくれていたものは他にもたくさんあると思います。
10年目くらいになったらまた書いてみましょう。
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