「迷いの中に倫理がある」

「信念を忘れたら、人は迷う。」

「迷って。迷いの中に倫理がある。」


『チ。』という作品に出てきた、ある2人の会話です。

アニメと漫画を同時進行で観て(読んで)いるのですが、

この作品は本当に名言が多いです。


アニメには、やはり映像の綺麗さや声優の演技の迫力などの良さがあります。

しかし、漫画にも良さがあります。

私は漫画の良さの大きな一つは、コマ割りにあるのではないかと思います。

『チ。』の原作漫画は、コマ割りがとても特徴的だと感じます。

どんな短いセリフでも、かなりダイナミックに紙面を使って表現されていることがあります。

例えば、『地。』というたった一言でも1ページまるまる使われたりしています。


動的であるアニメでも、このダイナミックさは味わえない気がします。

漫画のページをめくるというのは能動的な行為で、

次を読みたいと思った手が、次の言葉を探す。

この行為はアニメとは別の意味で動的なのだと思います。

そこに予想外の大きさのコマ割りでセリフが立ち現れたならば、

その言葉に作者の込めた大切な意図が感じられるものです。


人生は不確定要素だらけで、

自分にも信念みたいなものがあったほうが楽なのかなと思うこともあります。

信念を忘れたら人は迷う、そのとおりかと思います。

でも一方で信念というものをあまり理想化しすぎると、

今度はそれに縛られ、視野が狭くなったり、

ときには裏切られたと失望するかもしれません。

私は裏切られるのが怖くて、なかなか何かひとつのことを信じることができずにいます。


でもきっと気づいていないだけで自分の中で譲れない価値だったり、

「正義」のようなものは心の何処かにあるのだろうとは思います。


仕事も生活も悩みの連続です。

その時々に応じて自分にとっての正解は変わったりもします。

そんなことでよいのだろうかと不安にもなります。

例えば「心の専門家」なのに、困っている人の質問にすぐに答えられなくてよいのだろうかとか、

「親」なのに、こんな不完全な人間でいてよいのだろうかとか。


『迷いの中に倫理がある』

このシーンも、きっと作者が作品の中で最も強調したかったシーンの一つなのではないかと想像しています。

悩むことにも意味があると肯定してくれているような気がしました。


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