エルヴィンとリヴァイの友情

※【進撃の巨人】ネタバレ注意


現在、アニメ「進撃の巨人」Season3のPart.2がNHKにて放映中で、1週間の楽しみとなっております。

原作の素晴らしさもさることながら、アニメでは各キャラの感情の描写が更に丁寧になされており、各声優の名演もあって毎回胸が熱くなります。


今回はそんなアニメ「進撃の巨人」の中からシーンを一つ取り上げて、書いてみようと思います。


取り上げるのは、私が「進撃の巨人」で一番と言っていいほど好きなキャラ、

エルヴィン・スミス調査兵団団長です。

彼は主人公エレン・イェーガーや、読者から熱狂的人気を誇るリヴァイ兵長の所属する「調査兵団」の団長を務めるリーダーです。

巨人からの支配に終止符を打つために、壁の外へ出て巨人の討伐・捕獲・調査をする調査兵団は、壁の中の人類にとって一筋の希望の光であり、彼らは人類を救うという大義と使命を背負い、人類のために心臓を捧げることを誓っています。

その調査兵団のトップである彼は常に冷静さを保ち、時には冷酷に、

人類の勝利のために仲間や部下の命を切り捨ててきた経験を持ちます。

一方で胸のうちには熱い野望を秘めているのも彼です。

その野望とは、亡き父が彼に語った、ある“仮説”の真偽を確かめることでした。

彼は人類のためを思い誰よりも果敢に巨人に戦いを挑み続け、

そして何よりも、自分自身と亡き父のために巨人の真実を追求し続けてきたのです。

「いつかこの世界の謎を解き明かし、知る」ということが、彼の原動力だったのだと思います。

調査兵団団長である前に、

彼は“エルヴィン”であり“スミス“であったのです。




先日放送された第53話「完全試合」には、

彼が初めて見せる表情がありました。

もう少しで真実に手が届きそうな状況にある中、

彼はある作戦のために自分も含めた調査兵たちの命を捨てることを決断しなければなりませんでした。

今まで多くの仲間の命を人類のために差し出してきた彼ですが、

いざ自分の命を差し出すとなった時、

さらに自分の夢が叶う可能性が目の前にある状況の中で、

「未練」が生じたのです。

そこで彼は、最も信頼の置ける部下であり戦友のリヴァイに対して、

団長としてではなく、エルヴィン・スミスとしての本音を語りだします。

おそらく彼が団員の前で溜め息を付いたのは、これが初めてでしょう。



「・・・何度も・・・死んだほうがマシだと思った・・・。
・・・それでも、父との夢が頭にちらつくんだ。
・・・そして今、手を伸ばせば届くところに“答え”がある…!!

すぐそこにあるんだ・・・」


しかし同時に、彼の背中には心臓を捧げて死んでいった仲間たちの姿がありました。


「・・・だがリヴァイ、
見えるか 俺達の仲間が。
仲間たちは俺らを見ている。
捧げた心臓がどうなったか知りたいんだ。

まだ戦いは、終わってないからな。」



「全ては俺の頭の中の、子どもじみた妄想に過ぎないのか…?」と虚ろな目で問うエルヴィンに対し、

リヴァイは少し沈黙した後、エルヴィンの前に膝をついて口を開きます。



「・・・お前はよく戦った。おかげで俺たちはここまでたどり着くことが出来た。」




そして、




「俺は選ぶぞ。」


「夢を諦めて死んでくれ。新兵たちを地獄に導け。
獣の巨人は、俺が仕留める。」




あえて力強い口調で、エルヴィンの目を見てそう告げるのでした。




その言葉を聞いたエルヴィンの表情の変化の描写がすごいと思いました。

一瞬驚いた表情を見せましたが、

やがて何かを悟ったように、最後には静かに微笑みました。



単に「ふんぎりがつかない自分を後押ししてもらった」というだけでは説明できない深さがこのシーンにはあります。

ここでの二人のやりとりはもはや意識的なレベルの交流ではありません。

実はリヴァイは直前まで、エルヴィンと主人公エレンの命だけでも助かる方法を提案していました。

それはリヴァイが、

“人類が生き残るために必要不可欠な知能と発想力、人格を持っているのはエルヴィン・スミスの他にいない”

と信じていたからだと思います。

それまでリヴァイはエルヴィンのどんな突飛なアイデアや指揮に対しても、

「お前の判断を信じよう」と従ってきました。

それは単に上司と部下の関係性から来る従いではなかったことでしょう。



あの気高きエルヴィンが、死を前に戸惑い、うろたえ、葛藤する姿を見せた。

それは、共に闘ってきたリヴァイに向けてしか出せないある種のメッセージでもありました。

きっとエルヴィンは、

ここで死ぬことが最善であるとの理解に既に至っていたのだと思います。

しかし、夢を諦めることへの後悔や無力感が、それを言語化することを阻んだ。


メッセージを意識的にか無意識的にか受け取ったリヴァイは、

いつものように「お前の判断を信じよう」と言う代わりに、

「俺は選ぶぞ」「夢を諦めて死んでくれ」と、

絶対に死なせたくなかったその相手に対して告げたのでした。

まるでエルヴィンの中の“調査兵団団長”が、エルヴィン・スミスへの最後の指令を出すのを代弁するように...。



エルヴィンの最後の笑みは、

リヴァイに対する「分かってくれてありがとう」という感謝なのか、

「もう十分に使命を果たした」という自己への労りなのか、

そのどちらも含まれているように私は感じました。


そして彼は心臓を捧げ、

敵である獣の巨人へ新兵を連れて突撃します。

第53話は彼が被弾するところで終わりますが、

彼の生死がどうなるかは来週以降のアニメで明らかになるでしょう。




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